【書評】人類の未来は資本主義に飲み込まれてしまうのだろうか
人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊
井上智洋著
AIの進化が引き起こす社会へのインパクト、とりわけ"労働が不要"になることについて経済学的視点から論じている。
しかし、それはユートピアではない。
シンギュラリティを迎えると言われている2045年には労働のシェアは圧倒的にAIが占めるようになり、人が労働で賃金を得ることが難しくなる。資本家はAIを活用することで利潤を増やし、ますます資産を膨張させ、ピケティが『21世紀の資本論』で明らかにしたように貧富の差はさらに拡大する。
著者は処方箋としてベーシックインカムの導入を熱心に論じる。ただ富裕層から高額の税金を徴収する点については具体性に欠ける。現実には資産はより税率の低い国・地域(タックスヘイヴン)に移されていくからだ。これは政治の問題か。